天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
その日、俺の診察の補助についたのは二十代後半の主任看護師・望月さんという女性だった。
主任クラスなら安心して仕事を任せられるだろうと思っていたのだが、患者の名前を間違える、採血は下手、導尿もうまくできない……と、なかなか問題のあるナースだった。
どうして彼女が主任に? 今日だけたまたま調子が悪いのか? と、口には出さずに突っ込みながら、患者が不安にならないよう彼女のフォローに徹する。
ひと通り回診が終わった頃にはどっと疲れていたが、同じ診療科の医師として彼女になにも指導しないわけにはいかない。
俺は望月さんを廊下の隅に連れていき、厳重に注意しようと口を開く。
「望月さん、失敗は誰にでもありますが、あなたはそれを繰り返さないよう努力を――」
「ごめんなさい。今日は初めて貴船……勇悟先生と一緒でしたので、緊張してしまって」
望月さんはなぜか赤らめた頬に手を当て、俺から目を逸らした。
ぞわ、と鳥肌が立つような気がしたが、なんとか愛想笑いを浮かべる。