天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
年末年始、仕事を口実に絢美に連絡を取らない日が続いたが、絢美の方からも連絡はなかった。
聡悟と会って誕生日を祝ってもらった時に、ふたりは結ばれたのだろうか。連絡する勇気もないくせに、想像すると嫉妬心が湧く。
やっぱり、日本に帰るべきじゃなかったのだろうか。俺が帰ってこなければ、絢美は聡悟となんの問題もなく幸せになれた?
仕事以外においてはそんな風に自分の存在意義まで見失った俺は、ますます外科医としてオペに費やす時間が増え、その技術を後輩に指導する場面も増えた。
貴船総合病院に勤め始めてからわかったことだが、ここの心臓血管外科にはオペ技術の高いドクターが少ない。
聡悟は父親の経営上の仕事を手伝うことも多くあまりオペを執刀しないそうで、逆にオペしかできない職人のような俺は重宝された。
絢美を失った俺には病院という居場所だけが救いで、このまま私生活を犠牲にしてでも多くの患者を救い、父親の、ゆくゆくは聡悟のものとなる病院の発展に貢献出来たらいいと思い始めていた。
そして、絢美と夢のような一夜を過ごしてから一カ月が経過した、一月下旬。
稀の休みを取っていた俺の家に、なぜか聡悟が深刻な面持ちをしてやってきた。