月とカラスは程遠い
廊下に行くと彼は笑顔で、
 「朝は助けてくれてありがとうございました!」
と言ってくれた。

「いやいや全然!無理に走らせちゃってごめんなさい。」
私も応える。

 「先輩だったんですね。」
言われて気づいた。
彼は一年生用のスリッパを履いていた。
色を見ればわかる。

「ほんとだ!どおりで見たことない人だな~と思いました!」
先輩方とは一年生の頃関わるタイミングが
結構あった。

 「あの、名前聞いてもいいですか?」
少し不安そうな顔で彼が聞いてくる。
 
「あ、私は月島瑠南です!」
ちょうどポケットに入っていた学生手帳まで
見せちゃう。

 「僕は、日下泰陽(くさかたいよう)です。」
同じように手帳まで見せて名乗ってくれた。

「たいよう、、、」
じっと名前を眺める。
(太陽からきてるのかな~、、、ってことは、、)

 「どうかしました?」
顔をのぞき込まれる。

「あ!全然!!」
(見すぎた。)

 「ん?」

(あ、そんな大したことじゃないんだけど、、)

少し困った
私の空気を察したのか、

 「あ、すみません。お礼言いたかっただけなのでそろそろ、、本当にありがとうございました!」
そう笑顔で言って、泰陽くんは歩き出してしまう。

(気を使わせてしまった。)
去っていく彼の背中を見ながら思う。
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