腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。

「何するんですか！？ こんなことしたらお店にも迷惑がっ……」

「気にせんでもええよぉ？ ここはうちの息のかかったところやねんなぁ」

はぁ？ ふざけんな。こんなやつらと繋がりのある店だったなんて、もうここには二度と来てやるもんか。

と心の中で悪態をついたところで、事態が好転するわけでもない。

「さぁ、お金、耳揃えて返してくれはる？」

「……今はまだ無理です。少しずつなら何とか」

「おおん？ 何か言うたか？」

突然、男の目の色が変わった。鷹峯さんとは真逆のごつごつしたゴリラみたいな手で胸ぐらを掴まれ揺さぶられる。

「ちょ、やめっ……」

次の言葉を吐く前に床に投げ飛ばされ、私は強かにお尻を強打した。

「早よ金返さんかぁゴラァッ！！」

舌を巻いてそんなこと言われてもないものはない。こいつイヤイヤ期の二歳児か。

「姉ちゃんなぁ、若くて健康やろ？ 外国の金持ちに丸ごと売ってもええし、バラバラに捌(さば)いて方々(ほうぼう)へ売っぱらってもええし、どないしよかぁ？」

え、それは怖い。それは困る。リアルに想像してわりと本気で血の気が引いてしまった。

「ちょっ……む、無理無理無理っ……」

健康かどうかは諸説あるが、とにかく殺されたらシャレにならない。

「なぁ姉ちゃん？ ほら、ちょっとお仕置きしたろかぁ？」

「っ、ぅ……」