腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
男のごつい手が私の首にかけられ、力を込める。必死に外そうとするけれど、息ができなくて指先からどんどん力が抜けていく。

苦しい。本当に死んじゃう。死んじゃう死んじゃう死んじゃう。

〈聖南ダメっ!! 意識を保って……!!〉



ーーーー助けて、やめて……!!



ーーーー殺さないでっ!!!!




白くなっていく思考に知らない記憶の映像が流れる。

これは……そうだ、『殺された時』の記憶。

春夏の、最期の記憶が流れ込んでくる。



ああ、春夏は、こんな風に絶望しながら殺されたんだ。


私はふと、必死で私に呼びかけている春夏に思いを馳せた。







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