腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
数日後、元々予約していた美怜先生の外来を受診し、私は検査薬で陽性が出たことを伝えた。美怜先生はさして驚いた様子もなく、いつもの診察の他にすぐエコー検査をしてくれた。


「うん……ここに胎嚢が見えてるし、心拍も確認出来る。おめでたで間違いないわね」

「そうですか……」

あまり嬉しそうではない私の様子に、美怜先生は心配そうに首を傾げる。

「どうするの? このこと柊真には……」

「まだ言ってません……病院で確定するまでは黙っておきたくて……」

でもいざ診断されたところで、産む決断はおろか鷹峯さんに言い出すことすら私は躊躇っていた。

「産むならもちろん、全力でサポートはするけど……堕ろすならタイムリミットが……」

「分かってます……もう少し、考えさせて下さい……」

俯く私を見て、美怜先生は黙って頷いてくれた。


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