王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
シルディーヌの問いかけに、フリードは首を振ってNOの意を示した。
「彼女は平然と西宮殿の侍女を務めていますよ。侍女長にも報告し、次の動きがあるまで泳がせています。今の段階での罪は不法侵入のみで、王宮から追い出す事しかできませんからね。新入団員たちにしっかり見張らせています」
「それって、もしかして……」
「そう、諜報員かもしれません」
なんということだろう。アルフレッドの留守中に本物のスパイ登場である。
無害なか弱い女性に見えても、実は剣技に長けているかもしれない。もしもあのときアルフレッドの部屋を見せていたら、どうなっていたのだろう。
「彼女が黒龍殿にどうやって入ったのか、未だに謎なんです。警備はずっとあの場所にいて、誰も入れていないと申しましたから」
『壁を上って来たのか』
あの時のアルフレッドの言葉が頭をよぎり、シルディーヌは思わず苦笑をする。
「壁を伝ったのかしらね……。でも、階段を上って来たわ?」
「そうですか。確認しましたが、窓はどこも施錠されていて、破られていません。ということは、玄関から堂々と入ってきたことになります」