王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
でも警備は誰も見ていない。なんとも不可思議なことに、シルディーヌは身震いした。
「彼らは薬を盛られた形跡もありませんでした。シルディーヌさんはくれぐれもお気を付けください。唯一、ここに出入りできる侍女なんですから、情報を得ようとするでしょう。人目を忍んで接触してくるかもしれません」
人さらい事件のときを彷彿させる真剣な目に、シルディーヌは懸命にうなずいて見せる。
しかし気を付けると言っても、なにをどうすればいいのか。
シルディーヌは腕を組み、う~んと悩んだ。
人さらいのときは『ひとりで出歩かなければ大丈夫』で、ペペロネと一緒にいたものの事件に遭ってしまった。しかもシルディーヌはペペロネのついでに誘拐されたのだ。まったくもって失礼極まりない一味だった。
今回は王宮内である。ひとりで行動するなと言っても、通勤時の往復はひとりにならざるを得ない。
「侍女寮からの行き帰りは、どうしたらいいのかしら?」
「そうですね。団長の部屋に泊まっていただくこともできますが……ああ、いけませんね。それも危険です」
「そうかしら? アルフの仮眠室なのでしょう? どこよりも安全だと思うわ」