王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 フリードは大きく首を横に振った。

 夜の黒龍殿は施錠されるうえに宿直の団員がいるけれど、昼間よりも危険であるという。カメリアがどうやって宮殿に入ったのか分からないからだ。

 しかし侍女寮でも同じことがいえるのではないかと思うが、寮だと侍女たちがたくさんいるためにシルディーヌの部屋を特定するのに時間がかかる。諜報員は警備に見つかるリスクを考えて侍女寮にはいかないという。

「夜の闇に紛れて、さらわれる可能性があります。国の秘密は探られても、どうにかして繕うことができますが、命はそうじゃありません。提案しておいて申し訳ありませんが、絶対に無理ですね。もしもご自分がさらわれたら、団長はどうなさるかお考えになってください」

 シルディーヌがさらわれたら、また大砲が持ち出されるかもしれない。そうなれば、カメリアは木っ端みじんだ。

「それは、怖いわ。前は建物が丈夫だったけれど、普通の屋敷だったら、私も命がなくなりそう」

「もしもそうなれば、国が亡ぶかも………………」

「えっ、オーバーだわ」

「そんなことはございません!」

 王太子殿下の尽力で国が亡ぶのは免れても騎士団員はみな倒され、王宮内は暗黒に染まると真剣に話す。

「そっ、それは……あり得るのかしら……?」

「こうなったら背に腹は代えられません。禁断の手段を取りましょう」

 シルディーヌに一歩近づいたフリードは、グッと声を潜めた。

< 36 / 111 >

この作品をシェア

pagetop