王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
少々剣呑な空気を味わったが無事に黒龍殿に着くと、ブロンドの騎士は役目が終わったとばかりに伸びをして大あくびをした。
今朝のホールには団員たちの姿がなく、みんなすでに出払ったあとのようだった。いつものように二階に上がろうとすると、フリードが脇の階段から下りてくる。
「あっ、副団長~、途中で怪しいのがいましたけど、無事に連れて来たんで、もう寝てもいいっすか」
「待て! ポートマス隊長。報告が先だろう。その怪しいのはどうしたんだ?」
「あ~、それならリックが追って行きましたんで、奴が戻ったら聞いてください」
ブロンドの騎士──ポートマスはまたひとつあくびをして、「もう限界っす~」と言い捨てて、団員用の仮眠室のほうに行ってしまう。
その背中を見て、フリードがヤレヤレと言った感じでため息を吐く。
癖の多い騎士たちのかじ取りをするのは、フリードといえども大変なようだ。
「申し訳ございません。彼は徹夜続きで睡眠不足なんです」
王太子殿下が明日帰国するため、騎士たちは王都内の巡回を増やしており、警備の準備にも忙しいらしい。
「あんなふうでも、彼は統率力があって腕が立つ騎士なんです」