王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
お気楽な感じだったが、仕事はきっちりしていたので隊長として優秀なのだろう。
「それで、怪しいのは、どんな感じでしたか?」
「影しか見えなくて、よく分からなかったわ? でもカメリアじゃなかったみたい」
あれがカメリアだったら、すぐに捕らえられていたと思うのだ。女性の脚に、鍛えられた騎士が追い付けない筈がない。
そうするとあの影は男性であり、やはり複数人の諜報員がいることになる。
アルフレッドが探られているのは、命を狙われているからだろう。
いくら鬼神の団長でも、不意打ちで怪我をすることもあるし、毒薬を使われることだってある。ものすごく強くても、不死身ではないのだ。
もしも彼の身になにかあったら……そう思うと、シルディーヌの胸が押しつぶされたように、苦しくなる。
離れている今は、アルフレッドの元気な姿を見ていないから、余計に。
「フリードさん、スパイにアルフの弱みを探られてるって聞いたわ」
「団長のことがご心配ですか? 団長は近隣国で一番強いお方ですから、なにがあっても大丈夫ですよ」
「ええ、でも、私がちっとも大丈夫じゃないの」
少し青ざめた頬に、瞳から零れた滴が伝う。