王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 お気楽な感じだったが、仕事はきっちりしていたので隊長として優秀なのだろう。

「それで、怪しいのは、どんな感じでしたか?」

「影しか見えなくて、よく分からなかったわ? でもカメリアじゃなかったみたい」

 あれがカメリアだったら、すぐに捕らえられていたと思うのだ。女性の脚に、鍛えられた騎士が追い付けない筈がない。

 そうするとあの影は男性であり、やはり複数人の諜報員がいることになる。

 アルフレッドが探られているのは、命を狙われているからだろう。

 いくら鬼神の団長でも、不意打ちで怪我をすることもあるし、毒薬を使われることだってある。ものすごく強くても、不死身ではないのだ。

 もしも彼の身になにかあったら……そう思うと、シルディーヌの胸が押しつぶされたように、苦しくなる。

 離れている今は、アルフレッドの元気な姿を見ていないから、余計に。

「フリードさん、スパイにアルフの弱みを探られてるって聞いたわ」

「団長のことがご心配ですか? 団長は近隣国で一番強いお方ですから、なにがあっても大丈夫ですよ」

「ええ、でも、私がちっとも大丈夫じゃないの」

 少し青ざめた頬に、瞳から零れた滴が伝う。

< 47 / 111 >

この作品をシェア

pagetop