王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
ドSで厳しいことを言うし、たとえ『まったく、惜しくないな』なんて言われたとしても、彼がいなくなるよりマシだ。アルフレッドのことが大好きで心配なのだ。これはもう、どうしようもない。
翡翠色の瞳を涙で濡らしてフリードを見つめれば、彼は困惑したように微笑んだ。
「団長に弱みはございませんよ。むしろ今は強みしかないでしょう。こればかりは、断言できます」
「……そうなのかしら?」
「はい……変わらずに怖いものはあるでしょうが……あ、少しの間、ここでお待ちください。リックが戻ってきました」
そう言ってフリードは、駆けこんできたリックの元に急ぎ足で行く。リックのほかには誰もおらず、例の影は取り逃がしたようだ。
──逃がしてしまって、平気なのかしら。
鬼神の団長が率いる黒龍騎士団は、近隣の国の中でも最強と謂われている。その団員が捕まえられないなんて、潜んでいた影は相当の手練れではないだろうか。
シルディーヌはそわそわして二人を見つめた。
「それはお粗末なことだったな」
「はい……それよりも、もうひとつの……」