王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
聞こえてくる会話は途切れ途切れだけれど、ふたりの様子からは深刻さを感じない。
数回の会話をかわしたあと、フリードはシルディーヌのところに戻ってきた。
「フリードさん、怪しい人はどうなったの?」
「逃がしました。でも正体が見えましたから、対策できます。もうご安心ください」
「よかった……アルフは心配ないのね?」
シルディーヌは安堵の息を零し、瞳から零れた涙をぬぐった。
「ああ……これは、ほんとうに、陥落しますね……」
フリードがボソボソ呟き、シルディーヌは翡翠色の瞳を瞬かせた。
「え? 陥落って、なんのこと?」
「いえ、こちらのことです。団長は明日戻られます。王太子殿下の帰宮隊列は祭典パレードのようになりますので、王都と王宮内が賑やかになりますよ」
だから、シルディーヌさん! とフリードが語気を強める。
「いいですか、明日です。王都と王宮内が祭り状態になる明日が一番危険です。パレードを見に行かれると思いますが、くれぐれも、おひとりになることはお避け下さい!」
フリードとポートマスの温度差が激しくて、シルディーヌは戸惑ってしまう。