王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 そういえば前にも似たような注意を受けた……とデジャヴを感じながら、「わかったわ」としっかり頷いてみせたのだった。


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 黒龍殿は騎士団の拠点という役割から、王宮の最南端、正門の近くに位置している。

 そのため正門に近い窓からは、本宮殿へと続く馬車道を見ることができる。シルディーヌはわくわくと胸を躍らせて、二階の隅にある部屋から外を眺めた。

 今日は首を長くして待った、アルフレッドの戻る日である。

 二頭立ての馬車が三台ほど並べられる馬車道には、両脇に人が集まってきている。みんな仕事を放って、王太子を迎えるべく集まってきているのだ。

 正門の横には、羽飾りのついた帽子をかぶった楽師たちの姿も見える。

「すごいわ! ほんとうにお祭りみたい!」

 出立時は早朝だったせいもあって見送りイベントがなかった分、出迎えのイベントは派手に行うのが王宮の通例らしい。

 フリードに教えてもらった予定では、王太子殿下の隊列は王都の大通りに差し掛かる頃だ。まもなく王宮前の道に来る。

「あっ、そろそろ行かなくちゃ」

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