王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
シルディーヌはペペロネたちとパレードを見る約束をしているのだ。彼女たちとは黒龍殿の玄関で待ち合わせをしている。
いそいそと階段を下りて行くと、ペペロネとキャンディが身を寄せ合うようにして、ポーチの下に立っていた。
シルディーヌを見つけると、ホッとしたような笑顔を見せて手を大きく振る。
「シルディーヌったら、遅いわ。良い場所がなくなっちゃうわよ」
「ごめんなさい。でも、上から様子を見ていたから、人が少ない場所は分かるわ」
そこに行きましょうと二人を促して、シルディーヌたちは馬車道を目指す。みんな殿下の馬車や騎士団員の正装姿を見るのは初めてで、とても楽しみで仕方がない。
きゃあきゃあ華やぎながら歩き、馬車道の人出の多さを見て改めて驚くのだった。
どこを見ても人ばかり。シルディーヌたちのように背の低い侍女は、前に出なければ隊列の欠片も見えそうもなかった。
シルディーヌが発見していた空いている場所も、すでに人でいっぱいになっていた。王宮の人の多さを舐めていたようだ。
「どうしよう。これじゃ、隊列が見られないわ。ふたりともごめんなさい」