王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
完璧に黒龍殿の中でのんびりしていたシルディーヌのせいである。
「大丈夫よ。シルディーヌ。きっと空いてるところがあるわよ」
「そうよ。みんなで探しましょう。なかったら、強引に前に出ちゃえばいいわ」
ペペロネもキャンディもシルディーヌを責めない。なんて優しいのか。シルディーヌの胸がじんわりと熱くなる。
「あれ、シルディーヌさん、どうしたんすかぁ? もうすぐ団長たちが来ますよ」
突如声をかけてきたお気楽な口調に、シルディーヌは覚えがあった。
振り向けば思った通り、ブロンドの騎士ポートマスがそこにいる。ナイフ投げのリックも一緒だ。
今日のポートマスは睡眠が充実しているのか、きりっとしていて以前とは比べ物にならないくらいの美丈夫ぶりだ。
「来るのが遅かったわ。人がいっぱいで、隊列を見られそうにないから困っているの」
「そうっすか。そりゃいけませんね。そんじゃ、俺たちについてきてくださいよ。三人とも前に出しますから。いくぞリック」
「応、団長がよく見える、いいポイントに連れてきますよ」
「ほんとうなの! うれしいわ」
「俺たちも警備で道に出るんすよ。そのついでっす」