王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
頼りになる助っ人の登場に、シルディーヌは顔をほころばせる。ペペロネとキャンディも華やいだ笑顔になった。
「退いて、退いて、ちょっと前を失礼しますよ」
人をかき分けて進むポートマスのあとに続き、人に揉まれながらも、なんとかシルディーヌたちは前に出ることに成功した。
「ありがとう、ポートマスさん。リックさんも」
「んじゃ、俺らは仕事しますんで」
彼らはそのままシルディーヌたちの近くに立ち、興奮した群衆が必要以上に道に出ないよう睨みを利かせている。
よくよく見れば、馬車道のそこかしこに黒龍騎士団員の姿があった。今日はガスパルたち新入団員も警備にあたると聞いている。
二頭立ての馬車が三台すれ違えるほどに広かった道幅は、人波が作る塀のせいで馬車二台がどうにか並べるほどに狭まっている。
「すごいわ。この王宮には、こんなに人がいたのね……」
キャンディが感心したような声を出すから、シルディーヌは大きくうなずいた。
「貴族院の方々もきてるみたいよ。奥方やご令嬢を連れてきている人もいるわ。完璧にお祭りよね」