王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
ペペロネが示すほうを見ると、フロックコートを着た紳士たちがずらりと並び、そのところどころに綺麗なドレスを着た貴婦人がいる。お付きの侍女まで一緒のようだ。
王太子殿下の人気は凄まじいものだと感心していると、シルディーヌはふと刺さるような視線を感じた。
──この感じ……王太子殿下とダンスをした時に似てるわ……。
嫉妬、である。
何故に今、そんな視線を浴びるのか分からない。
振り返ってみたシルディーヌは、思わずビクッと体を揺らした。
こちらを睨むようにして見ている侍女たちの中に、巻き毛のヘンリエッタがいたのだ。どうやら侍女たちは、シルディーヌたちがポートマスと一緒にここに来たのが気に入らないようだ。
団員と一緒にいただけで嫉妬の対象になるとは、黒龍騎士団員の人気ぶりを実感してしまう。
「あら、あそこにいる侍女たち見たことがあるわ。王宮付きの人たちよ。宮殿で控えていなくてもいいのかしら?」
キャンディが声を潜めると、ペペロネも同じように囁くような声を出す。