王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
「王族付きじゃないのかもしれないわ。私たちみたいに、雑用をこなしているから、おそば近くにいなくてもいいんじゃないかしら。それに雑用係だと殿下のお姿を拝見できるのは、三日に一度あるかないからしいわ」
「それならお姿を拝見できるパレードは見逃せないわね。でも王宮付きの侍女は、さすがにオーラが違うわ」
シルディーヌは、つい自分の姿と比べてしまう。
雑用係でもみんなヘンリエッタと同じように美しく髪を整えている。群衆の中にあっても楚々と立ち、高級侍女らしい上品さを醸し出しているのだ。
ヘンリエッタは怖い顔でこちらを見ているが、それでも美しい。
対してシルディーヌは、いつも通りに髪をひとつに束ねただけ。立姿は子爵令嬢らしいものの、彼女たちのようにすました雰囲気はない。
今日は久しぶりにアルフレッドの姿を見るのだ。もっと女性らしく綺麗に髪を結って迎えればよかった、と真剣に思う。
──でも、今更遅いわ……。
容姿ではヘンリエッタに敗北している。それにペペロネやキャンディの横に並んでいると、スタイルの貧相さも目立つ気がする。