王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
姿勢正しく馬に乗り、雄々しく進んでくる騎士団の姿は噂通りに素敵で、あちらこちらから黄色い声が飛んでいる。
──アルフはどこ?
シルディーヌは祈るように胸の前で手を組んで、懸命に姿を探した。団長ならば、先頭付近にいると思うのだが、アクトラスの後ろには別の騎士がいる。
もしかして反対側の見えない位置にいるのでは……と不安がよぎったとき彼を見つけ、シルディーヌは感激のあまり瞳を潤ませた。
徐々に近づいてくる隊列の、王太子殿下の馬車の手前にアルフレッドがいる。
黒い騎馬にまたがり、まっすぐに前を向いて進んでくる。
「アルフ……」
王太子殿下の立派な馬車もほかの団員の姿なども目に入らず、ただアルフレッドの姿だけを追う。
プラチナブロンドの髪を風になびかせて、夏空のような瞳に怜悧な光を宿している。騎士団長の立派な姿にシルディーヌの胸が激しく高鳴る。
いつものようにむっすりと唇を結んだ、ワイバーンな顔。疲れも見えず、団服には汚れも破れもなくて怪我をしている様子もないようだ。
──よかった……。