王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 アルフレッドの姿があと数メートルほどの距離に近づいたとき、王宮付きの侍女軍団から黄色い声が飛び始めた。

「おかえりなさいませ!! マクベリーさまーーー!!」

「マクベリー団長さまーーっ」

 さきほどまで楚々としていたのに、今は周囲の目も憚ることなく熱狂的な声を出して手を大きく振っている。

 それに圧倒されながらも、シルディーヌはアルフレッドの姿を目で追った。

 シルディーヌがここに立っていることに気づいてくれるだろうか。ちらっとでもいいから目が合うとうれしい。

 そんな思いを込めてじっと見つめていると、突如、背中に強い衝撃を受けた。

 え? と思う間もなく、シルディーヌの華奢な体は道にはじき出されていた。というよりも脚が宙に浮いている。つまり、まっすぐ騎馬に向かって飛んでいた。

 ど、どうしよう!?

 瞬間的に視線を走らせると、シルディーヌのいた一角だけ、五人ほどが押し出されていた。ペペロネが道に転がり出て、キャンディはリックに受け止められた格好になっている。

 みんなが道に出ているその中でも、シルディーヌはダントツな勢いで飛んでいるようだった。

 ──か、軽いからかしら!?

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