王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

「どうもしない。どのみちもうすぐ終点なんだ。このまま乗ってろ。少しばかり飛び入り参加があっても、殿下は気にしないだろう」

 たしかに、おおらかな人柄の王太子殿下ならば、笑って済ませてくれるかもしれない。だけども見物人たちの中にはそうじゃない人もいる。馬車道はまだまだ続いているのだ。

「でも、事情を知らない人たちは変に思うわ。護送されてる罪人だと思われちゃうかも」

 アルフレッドの胸に顔を埋めて隠れてもいいけれど、公衆の面前でそれをするのは憚られる。

「好奇の目で見られてしまって辛いわ」

「む……そうか」

 いきなり、ばさっと布のようなものが降ってきて、シルディーヌは周りの景色が見えなくなった。

「これで隠してやる。旅で埃っぽくなってるが、我慢しろ」

 被された布は旅用のマントみたいで、たしかに土と埃の匂いがする。けれどそんなことはどうでもよかった。

 シルディーヌはアルフレッドの胸にぴたっと頬を寄せる。

 布のおかげで人目を気にすることなく、しかも自分から堂々とくっつけるのは馬に乗っている今しかない。

「うん、すごく安心できる。ありがとう、アルフ」

「……仕方がないからな」

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