王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
馬の背でゆられながら、このままずっと乗っていられたら……なんて思ってしまう。
けれどそんな夢のような時はすぐに過ぎてしまい、終点に到達した騎馬は止まる。シルディーヌは布を被せられたまま、抱きかかえられるようにして馬から下りた。
「団長、ポートマスが捕らえました」
「よし、尋問室に入れておけ。俺が調べる」
アルフレッドはきびきびと団の指揮にあたっている。
だからシルディーヌはひとりでマントを取ろうとするけれど、巨人のアルフレッドのマントは大きくて、どこが端っこなのか見当もつかない。
まるでシーツみたいだ。どうしたら取れるのか。
ワサワサモガモガと必死にもがいていると、スッと視界が開けて呆然とする。誰かが取ってくれたのだ。
「あ、すみません。ありがとうございます」
マントを持った人を見上げたシルディーヌは、飛び上がらんばかりに驚いた。
「やあ、シルディーヌ。久しぶりだね。さっきは怖かっただろう?」
さわやかな笑顔を向けてくれるのは目もくらむような麗しきお方……!
シルディーヌは慌てて礼を取った。
「お、王太子殿下。先ほどは隊列を乱してしまい、申しわけございません!」