初老アイドルが一般人女子との恋を成就させるまで
初めての電話から2週間後、スパノヴァはこの日、雑誌の撮影とインタビューで都内のスタジオに来ていた。
朝から始まった撮影は順調に進んでおり、今は昼休憩中だった。
ケータリングで食事を済ませたメンバー4人は、撮影再開まで控室でなんとなくゆったりとした時間を過ごしていた。
航太は、ブラックコーヒーを飲みながら、テーブルの上に置いたスマホの画面を確認すると、再びスマホをテーブルの上に戻した。
確認した画面には、別段メールがあったという通知は来ていなかった。
2週間前、茜と電話して以降、彼女からメールの返信は途絶えていた。
もちろん、彼女にも自分の生活があるのだから、忙しくて返せなくても何らおかしくはない。
ただ、2週間前のあの日の電話が原因かもしれないと、航太は考えていた。
あの日、茜は悩んで悩んで、自分に相談をしてきたはずだ。
恐らく、自分以上に近しい相談しやすい相手は彼女の周りにはいるだろう。
その中で、自分に相談してきたのだ。かなり勇気を出して相談してきたことは、想像に難くない。
電話では、当然相手の顔は見えない。
だが、声だけで彼女の緊張と、芝居への真剣さが伝わってきた。
だからこそ、航太は自分も真剣に答えなければと思ったのだ。
正直に言えば、一目惚れした相手からの電話、しかもその内容は自分に相談をしたいという、自分を頼ってくれるものだから、年甲斐もなく浮かれてしまっていた。
自分の印象を良くするために、ただ優しく答えた方がよかったのかもしれない。
だけど、曖昧に優しくするのではなく、厳しいことでもそれが彼女の真剣さに応えることになるのなら、言うべきだと。そう航太は考えた。
そう考えて、きちんと自分で判断した方がいいと答えたのだ。
また、航太自身が芝居には常に真摯に取り組んできた。
その大切なものに対して、曖昧に答えることは、航太のプライドも許さなかった。
電話が終わった後、航太を襲ったのは、ちゃんと伝えられたことへの安堵感と、それを上回る後悔だった。
やはり、もっと優しく答えるべきだったのではないか。
でも、それでは茜たちが芝居を作り上げるうえで良くはない。
どれだけ考えても、もう既に電話は終わっていて、発した言葉はもう戻らない。
いつまでもぐじぐじと悩んでいてもしょうがないので、航太は冷蔵庫から缶ビールを一本取りだして、一気にグイっと煽った。
そうして2週間が経過して、現状、茜からの連絡はない状態なのであった。
無論、航太から連絡を取ればいいのだが、少々厳しく言ってしまった手前、航太から連絡し辛いというのが本音である。
「ねぇリーダー」
意識を思考に沈めていた航太を引っ張り上げたのは、一仁の呼びかけだった。
「どうした?一仁」
「茜先生と進展あったー?」
一仁の口からは、今まさに航太が考えていた人物の名前が飛び出し、思わず航太は固まった。
その異変を、一仁が見逃すはずがない。
「なになに?なんかあったの?」
目をキラキラさせながら詰め寄る一仁に、航太は思わず上半身を後ろに引く。
が、椅子に座っている都合上、逃げることはできない。
「ありがとう一仁、聞いてくれて」
「やっぱそーいうの突っ込めるの、お前しかいねぇからな」
気づけば、暁と琉星も先ほどまで座っていた所から椅子ごと移動し、それぞれの笑顔を浮かべて航太の近くにいる。
2週間前にも感じた逃れられない空気を悟った航太は、その時よりも早く観念して、口を開く。
朝から始まった撮影は順調に進んでおり、今は昼休憩中だった。
ケータリングで食事を済ませたメンバー4人は、撮影再開まで控室でなんとなくゆったりとした時間を過ごしていた。
航太は、ブラックコーヒーを飲みながら、テーブルの上に置いたスマホの画面を確認すると、再びスマホをテーブルの上に戻した。
確認した画面には、別段メールがあったという通知は来ていなかった。
2週間前、茜と電話して以降、彼女からメールの返信は途絶えていた。
もちろん、彼女にも自分の生活があるのだから、忙しくて返せなくても何らおかしくはない。
ただ、2週間前のあの日の電話が原因かもしれないと、航太は考えていた。
あの日、茜は悩んで悩んで、自分に相談をしてきたはずだ。
恐らく、自分以上に近しい相談しやすい相手は彼女の周りにはいるだろう。
その中で、自分に相談してきたのだ。かなり勇気を出して相談してきたことは、想像に難くない。
電話では、当然相手の顔は見えない。
だが、声だけで彼女の緊張と、芝居への真剣さが伝わってきた。
だからこそ、航太は自分も真剣に答えなければと思ったのだ。
正直に言えば、一目惚れした相手からの電話、しかもその内容は自分に相談をしたいという、自分を頼ってくれるものだから、年甲斐もなく浮かれてしまっていた。
自分の印象を良くするために、ただ優しく答えた方がよかったのかもしれない。
だけど、曖昧に優しくするのではなく、厳しいことでもそれが彼女の真剣さに応えることになるのなら、言うべきだと。そう航太は考えた。
そう考えて、きちんと自分で判断した方がいいと答えたのだ。
また、航太自身が芝居には常に真摯に取り組んできた。
その大切なものに対して、曖昧に答えることは、航太のプライドも許さなかった。
電話が終わった後、航太を襲ったのは、ちゃんと伝えられたことへの安堵感と、それを上回る後悔だった。
やはり、もっと優しく答えるべきだったのではないか。
でも、それでは茜たちが芝居を作り上げるうえで良くはない。
どれだけ考えても、もう既に電話は終わっていて、発した言葉はもう戻らない。
いつまでもぐじぐじと悩んでいてもしょうがないので、航太は冷蔵庫から缶ビールを一本取りだして、一気にグイっと煽った。
そうして2週間が経過して、現状、茜からの連絡はない状態なのであった。
無論、航太から連絡を取ればいいのだが、少々厳しく言ってしまった手前、航太から連絡し辛いというのが本音である。
「ねぇリーダー」
意識を思考に沈めていた航太を引っ張り上げたのは、一仁の呼びかけだった。
「どうした?一仁」
「茜先生と進展あったー?」
一仁の口からは、今まさに航太が考えていた人物の名前が飛び出し、思わず航太は固まった。
その異変を、一仁が見逃すはずがない。
「なになに?なんかあったの?」
目をキラキラさせながら詰め寄る一仁に、航太は思わず上半身を後ろに引く。
が、椅子に座っている都合上、逃げることはできない。
「ありがとう一仁、聞いてくれて」
「やっぱそーいうの突っ込めるの、お前しかいねぇからな」
気づけば、暁と琉星も先ほどまで座っていた所から椅子ごと移動し、それぞれの笑顔を浮かべて航太の近くにいる。
2週間前にも感じた逃れられない空気を悟った航太は、その時よりも早く観念して、口を開く。