初老アイドルが一般人女子との恋を成就させるまで
航太たちスパノヴァが出演する「Utaoh!!」の放送日がやってきた。
春は、とかく学校という所はとにかく忙しく、慌ただしく日々が過ぎていく。
そのため、世の中の情勢から置いていかれることもままある話だ。
そんなこともあって、茜自身は今日がスパノヴァ出演の「Utaoh!!」の放送日だということはほぼ意識になく、奇跡的に早めにあがれた日に帰ってきて、夕飯のお供にテレビをつけたらスパノヴァが出ていた、というのが実情だった。
今までなら、「スパノヴァが出てるなー」くらいにしか思っていなかったが、もう今は違う。
テレビに映っている一人は、自分に近しい人間なのだ。
テレビの中の航太は、髭は2月に会った時とほぼ変わらないが、髪の毛はその時から伸ばしたようだった。
衣装はグレンチェックのセットアップで、インナーに白のVネックを合わせている。
そこにいるのは、確かに『アイドルグループsupernovaの小倉航太』で、あの日、茜の前で会いたいときに会える関係になりたいと言った航太とは、どこか違っていた。
同じ人物のはずなのに、なんだか違うという不思議な感覚のまま、茜はテレビを見つめていた。
テレビの中では、航太の年齢の話が展開されていく。
『いやー、50か。想像つかないな……』
『今のまま独り身やと、寂しい老後突入やで?』
“独り身”というその言葉に、茜は思わずドキリとした。
話自体は、一仁が老後の面倒は俺たちが見ます!と言って次の話に移っていったが、茜の心臓はドキドキとしたままだった。
多分、今まではスパノヴァが、航太が言っても気にならなかった言葉だ。
だが、今の茜は航太が“独り身”であることに、無関係ではいられない。
茜とて、世間一般では立派な大人といえる年齢だ。
付き合った先にあるゴールのことが、思い浮かばない訳がない。
ただ、航太とのことは、それまで遠い雲の上の人という印象が強く、付き合うという所に行くまで、通常ではない様々なことを考えていた結果、付き合った先にあるゴールというものまで、考えが及ばなかった。
しかし、付き合っているということは、そのゴールにたどり着く可能性があるということ。
それは相手が航太であろうがなかろうが関係なく、等しく与えられている可能性だ。
と、茜の中に不意に別の考えが浮かび上がる。
自分自身、航太が初めの恋人ではない。
それは航太にも言えることだろう。
茜自身の記憶にはないが、きっと熱愛報道があったはずだ。
だから、誰と航太が付き合っていたかは分からない。
しかし、それ故に航太が誰と付き合っていたのかということが、今になって気になってくる。
自分でネットを検索すれば、すぐに知りたいことは知れるだろう。
だけど、それを知ったところで、良い思いをすることは一切ない。
今更、航太が過去付き合った人を知っても、茜にどうすることもできない。
その人と自分を比べて、落ち込むだけだ。
茜は浮かんでしまった興味を振り切るように、夕飯にとテイクアウトしてきた油淋鶏を食べる。
温めたはずの油淋鶏は、少し冷めていた。
春は、とかく学校という所はとにかく忙しく、慌ただしく日々が過ぎていく。
そのため、世の中の情勢から置いていかれることもままある話だ。
そんなこともあって、茜自身は今日がスパノヴァ出演の「Utaoh!!」の放送日だということはほぼ意識になく、奇跡的に早めにあがれた日に帰ってきて、夕飯のお供にテレビをつけたらスパノヴァが出ていた、というのが実情だった。
今までなら、「スパノヴァが出てるなー」くらいにしか思っていなかったが、もう今は違う。
テレビに映っている一人は、自分に近しい人間なのだ。
テレビの中の航太は、髭は2月に会った時とほぼ変わらないが、髪の毛はその時から伸ばしたようだった。
衣装はグレンチェックのセットアップで、インナーに白のVネックを合わせている。
そこにいるのは、確かに『アイドルグループsupernovaの小倉航太』で、あの日、茜の前で会いたいときに会える関係になりたいと言った航太とは、どこか違っていた。
同じ人物のはずなのに、なんだか違うという不思議な感覚のまま、茜はテレビを見つめていた。
テレビの中では、航太の年齢の話が展開されていく。
『いやー、50か。想像つかないな……』
『今のまま独り身やと、寂しい老後突入やで?』
“独り身”というその言葉に、茜は思わずドキリとした。
話自体は、一仁が老後の面倒は俺たちが見ます!と言って次の話に移っていったが、茜の心臓はドキドキとしたままだった。
多分、今まではスパノヴァが、航太が言っても気にならなかった言葉だ。
だが、今の茜は航太が“独り身”であることに、無関係ではいられない。
茜とて、世間一般では立派な大人といえる年齢だ。
付き合った先にあるゴールのことが、思い浮かばない訳がない。
ただ、航太とのことは、それまで遠い雲の上の人という印象が強く、付き合うという所に行くまで、通常ではない様々なことを考えていた結果、付き合った先にあるゴールというものまで、考えが及ばなかった。
しかし、付き合っているということは、そのゴールにたどり着く可能性があるということ。
それは相手が航太であろうがなかろうが関係なく、等しく与えられている可能性だ。
と、茜の中に不意に別の考えが浮かび上がる。
自分自身、航太が初めの恋人ではない。
それは航太にも言えることだろう。
茜自身の記憶にはないが、きっと熱愛報道があったはずだ。
だから、誰と航太が付き合っていたかは分からない。
しかし、それ故に航太が誰と付き合っていたのかということが、今になって気になってくる。
自分でネットを検索すれば、すぐに知りたいことは知れるだろう。
だけど、それを知ったところで、良い思いをすることは一切ない。
今更、航太が過去付き合った人を知っても、茜にどうすることもできない。
その人と自分を比べて、落ち込むだけだ。
茜は浮かんでしまった興味を振り切るように、夕飯にとテイクアウトしてきた油淋鶏を食べる。
温めたはずの油淋鶏は、少し冷めていた。