苺にはもうなれない

午後のおやつには少しだけ早い時間。

芝生のところで親子連れがボール投げをして遊んでいるのが見えるだけで、公園の中はあまり人がいない。


私は苺のショートケーキをひと口食べた。
「んー!美味しいです」
口の中が甘い生クリームの味いっぱいで、幸せだ。

武岡さんもチョコレートケーキを食べて、美味しそうに目を細めた。


半分くらい食べて、ケーキを交換した。

武岡さんが、
「苺、食べてください」
と言って、私の口元にフォークで刺した苺を持ってきた。


「えっ、いいですよ?武岡さんが食べてください」
遠慮していると、
「はい、口開けて」
と、武岡さんは更にフォークを近づけた。


恥ずかしくなってきた。


でも武岡さん、普通に待ってるし……。

私は意を決して口を開ける。


優しい動作で、武岡さんは私の口に苺を運んでくれた。



「美味しいですか?」

「……美味しいです、けど、恥ずかしいです」


正直な感想だった。


「え?あぁ、そっか」
武岡さんの耳が少しだけ赤くなった。




赤くなった耳を見て。

私は改めて、好きだなぁって思った。

私の気持ち、伝えたいなぁって思った。



「……好きです」



するりと自然に言葉にしていた。


「ん?」

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