『ミステリアスと噂の遥くんが、2人になると甘すぎるんです』
悪いため息ではない。


花瓶から一枚の花弁が落ちたような息で、
それはとても気持ちの良いため息だった。


こんな風に肩の力を抜いて風の音に耳を澄ませるなんて、いつ以来だろう。


本当に静かだな。


SNSや人間関係といった心臓を縛る縄の存在を、
今だけは忘れてしまいそうだ。


三角街と呼ばれるらしいこの町は、それ程に心地がいい。



この街の夕焼け空や、その淡い光に照らされた田んぼやアスファルト。
それらは、本当に優しい色をしていたのだ。
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