社長、それは忘れて下さい!?

 涼花が最後まで言い終わらないうちに、旭が話を切って割り込んできた。

 確かに涼花が辞めることになれば、一番困るのは旭だろう。龍悟も秘書が辞めることになれば一時的に大変だろうが、業務量から考えれば旭の方が大変なのは言うまでもない。

 だから涼花も退職する時は急に辞めるのではなく、後任が決まって引継ぎをしてからやめるつもりでいた。だは旭は涼花に『退職』という選択を諦めさせようと必死に説得を繰り返した。

「ていうか、別に辞めなくてもいいじゃん。……涼花、社長の気持ちには気付いてるでしょ?」

 旭の言いたい事はすぐにわかった。つまり『付き合えば解決』という話だが、涼花にとってはそれが最も難しい選択だった。

「それが、そう簡単な話でもなくて」

 ここまで話したのなら、もう全て話してしまった方が旭にちゃんと理解して納得して貰えるような気がした。涼花は迷ったが、結局涼花の体質から今まであった出来事まで、かいつまんで旭に話すことにした。

 中には出来れば自分の口からは言いたくない内容も含まれていたが、涼花は先輩として、そして人として旭を信用していたからか、話し始めると案外するすると言葉が出てきてくれた。

 旭は途中目を丸くしたり、むせ込んだり、少しの質問をしたりしたが、涼花の話を否定することなく最後まで話を聞いてくれた。そして話し終えて出てきた最初の感想は、龍悟のそれにかなり近いものだった。
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