Don't let me go, Prince!


「私が渚の服を脱がせても、何の証明にもならないと思いませんか?この行為は渚が自分から脱ぐことに意味があるのです。」

 そんな小さな違い私には分からないわよ。彼と違って私には彼の考えている事はこれっぽっちだって分からない。いつも人の気持ちを読む事に長けていると言われる私でも、彼の冷たい瞳から感情を読み取ることは難しい。

 でも私は知っている。感情の読めないその瞳の中にだって、凄く暖かな貴方の感情がある事を。だってあの時貴方は私に手を差し伸べてくれたもの……

 そんな貴方だから私は______

「渚、もう一度だけ言います。脱ぎなさい。」

 言葉を返すことの出来ない私に弥生さんは容赦しない。二度目の命令に私は歯向かう事が出来るのだろうか?

 このまま全てを彼に見せてその後はどうなるの?大きな不安と小さな期待が私の中には存在する。もし彼にこの身体に触れられたなら私は怒るのだろうか、それとも悲しむ?

 私は震える指先でトレーナーの裾を掴む。彼の瞳の圧力に私はこれ以上抗う事が出来なかった。

 着ている服はトレーナー。ボタンも無いから時間をかけて脱ぐ行為に抵抗しようとすることも出来ない。私は諦めて一気にトレーナを脱いで見せた。

 下にはまだ長袖のシャツだって着ている。一枚脱いだだけで彼が許してくれるのかは分からないけれど。

「脱いだわよ?私にいう事を聞かせて、これで満足かしら?」

 これで終わりなんて甘い事を考えてるわけじゃない。それくらいで終わるのならこんな場所に監禁しようなんて思わないはずだから。彼はどれだけの事を私に望んでいるのだろう?

「いいえ?まだです。このシャツも下着もすべて脱ぐのです、渚。」


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