Don't let me go, Prince!
ゆっくりとお風呂に入った後、自室のベッドの上で私は手に持ったスマホの画面と睨めっこ。
四ツ谷先生の番号はスマホに登録したけれど、いまだに電話をかけれずにいる。
「……本当にあの人と何を話せばいいのかしら?」
でももしシュン君の事以外の何かの理由があって彼が私に電話番号を渡したのだとしたら、知らん顔して放っておくのは申し訳ない気がする。
今から四ツ谷先生に電話をかける?それとも……どうして電話をかけるだけなのに、私はこんなに緊張しているの?こんなのいつもの自分らしくない。
「別に、緊張する必要なんてないわ。ちょっとお話するだけよ。」
スーハーと深呼吸して発信ボタンを押した。プルルルル……というコール音がやけに大きく聞こえる。2コール、3コール、もういっそ切ってしまおうか、なんてことを考えた時「もしもし」と低い声が聞こえてきた。
どうしてか私の心の奥に響く、四ツ谷先生の男らしい低い声。
「もしもし……渚ですけど。あっ、シュン君と一緒に病院に来て、メモ用紙をもらった……えっと。」
自分の名前も知らないであろう相手に自分の事をどう伝えればいいのか?そもそも本当に自分が電話をしてよかったのかと慌ててしまって上手く喋れない。
「渚さん、ですね。私は四ツ谷 弥生です。」
「……四ツ谷 弥生先生?」
綺麗な顔の四ツ谷先生に似合う名前だと思った。名前を教えてもらったので、せっかくだから名前で呼んでみる。
「先生は止めてください。私も貴女の事は渚さんと呼ばせてもらいますから。」
「弥生、さん。でいいんですか?」
今まで先生と呼ぶことで一線引いていたつもりだったが、名前を呼びあう事で急に弥生さんと距離が近くなった気がする。