Don't let me go, Prince!
「ええ。それでお願いします、渚さん。」
弥生さんに渚さんと名前を呼ばれると、なんだかくすぐったい様な気分になる。なんだか普段されない女性扱いをされているような、そんな気分。
「はい……えっと……」
だからと言って弥生さんと何を話していいのか分からない状態が変わる訳でもなく、一生懸命話題を探そうと頭を働かせる。
でも、最初に番号を渡したのは弥生さんの方なのだから、弥生さんの方から何か話してほしい。でなければ何故私にわざわざ番号を渡したのか分からないじゃない。
「渚さん……食事に行きませんか?」
「ふぇ?……ええ?」
いきなりの弥生さんの提案に、私は驚いて変な声が出てしまった。
だってそうじゃない?今日患者の付き添いで病院に行っただけなのに、急に食事に誘ってくるんですもの。
せめてもう少し会話が弾んでから、そういう話になるものじゃないのかしら……?
「……すみません。嫌ですよね、私が相手では。」
私が返事を出来ないでいると、弥生さんは私が嫌がってると思ったらしい。そう言うんじゃないの、ただ吃驚しただけ。
「そんな事はないです、本当に連れて行ってくれるんですか?」
気付いたらはっきりと返事をしていた。どうしてかしら、こんな会話も弾まないような相手なのに誘われてちっとも嫌だと思わなかったの。
こんな事を言ったら笑われるかもしれないけれど、彼を見た時に私はどこかで会ったことがあるような懐かしさを弥生さんから感じていたから。
「……」
今度は弥生さんからの返事がない。もしかして、本当は私に断ってほしかった、とか?