Don't let me go, Prince!
「そうでないのならば、昨夜の様に渚を抱きしめて眠らせてください。」
「だ、抱きしめてですって?」
当然のことのように話す弥生さんだけれど、絶対に今までの行動から変わり過ぎですからね?
あんなに私に触れないようにしようとしていた人とは思えない。信じられないわ、眠った私を抱きしめていたなんて。
「そうです。昨夜のように私に甘えなさい。出来ますね、渚。」
昨日?まさか……私が甘えて誰かに擦り寄ったのは夢ではなかった?あの時の弥生さんの香りは本当に本人の?
彼から命令形で言われた言葉が私の心を縛る。こういう言い方をされるのは、嫌いじゃない。
「……は、はい。」
弥生さんの言葉に、私は顔を赤くしながらも頷くことしか出来ない。だって素直な自分の感情を全て見られてしまっていたのだもの。今更隠しても意味がないでしょう?
先にベッドに入った弥生さんの隣に、戸惑いながらも私もそっと中に入り弥生さんの肩に寄りかかる。
そのまま私の背に手を回し抱き締める弥生さんは力強くて……こんなに近い距離なのに胸は何故なのかギュッと締め付けられるよう。
「あの、苦しくないですか?弥生さん。」
「私は大丈夫です、気にしないで眠りなさい、渚。」
そう言われて私は彼に逆らわずに静かに目を閉じる。昼間眠ったせいかなかなか寝付けないでいると、私を抱きしめる弥生さんの腕の力がもっと強くなる。
「渚……もう少しだけ、このままで……」
私は弥生さんの小さな呟きの意味を知るのが怖くて、瞳を固く閉じて何も聞かなかったフリをした。