Don't let me go, Prince!
弥生さんの首に回していた腕を外されて、右の手首を掴まれる。どうしたのかと思って見ていたら、指先に彼の唇を押し付けられる。
欲の色を浮かべた彼の瞳にじっと見つめられ後、少しだけ舌先で指を舐められて身体がゾクリと震えてしまう。
彼はゆっくりと唇を移動させて全ての指に唇で触れていく。指の全てにキスを済ませると、今度は手首へと……
私は今までこんな丁寧に身体に触れられたことなんて無い。私は知らないわ、こんな抱き合い方は。
彼とする行為は私にとって初めて同然のものだった。
彼の唇がパジャマまでたどり着いた所で、やっと弥生さんは私の服のボタンを外し始めた。ボタンを外して開いた服の隙間から入ってくる弥生さんの大きな手。冷たい指先が私の背中に回りブラのホックが外される。
ゆっくりとした動作で服を剥がれて、私は彼の下でショーツ一枚の姿にされてしまう。恥ずかしくて胸を隠そうとすると、片手で簡単に両手首を掴まれて阻止される。
「挑発したのは渚の方です。今更、隠すなんてことは許しません。」
「そんな……」
だって弥生さんがそんなに見つめるから。恥ずかしいのに……それでも弥生さんにもっと見て欲しい。そんな矛盾した思いを深く考えるような時間は弥生さんは与えてくれなかった。
首筋を指先で触れられたかと思うと、彼に優しく耳朶を噛まれる。
「やぁっ……」
思わず口から出てしまった甘い声に驚き、口を塞ぐ。でも勿論弥生さんはそんな事は許してくれない。
「素直に声を聞かせなさい。《《この場所》》では渚が声を我慢する必要などありません。」
反抗する気だったのに……そうする事が出来ない。彼に命令されると頭の奥が甘く痺れるよう。