Don't let me go, Prince!


 命令形で話しているはずなのに、彼の言葉はいつもより何だか優しくて甘い。弥生さんの言葉の意味を深く考える余裕がなくなってしまう。

「……弥生さん、私……」

「さっきまでの強気はどうしました?渚は、このまま私のいい様に進められてもかまわないのですか?」

 そう言って耳朶を舐められる。ビックリして悲鳴のような声が出そうになるのを耐えると、彼の左手がわき腹に触れる。

 そのままゆっくりと上がってきた大きな手で、胸を包まれてその感触を確かめられる。

「はっ……ぁんっ……」

 やわやわと揉まれて指で先端を刺激される。や……やだ、そんなに指で弄らないで?

「ちょうど良い柔らかさで、この飾りも可愛らしいですよ?」

「ど……して、そ……んな事、言うの?」

 弥生さんと抱き合うのは初めてだから、彼の抱き方を私はもちろん知らないのだけれど……
 私は何となく、彼がわざと私にそう言ってる気がした。

「渚が挑発してきたからです。私も……気の強い渚を少し虐めてみたくなりました。」

 彼の口元が微かに弧を描いている気がした。その顔がもっと見たくて夢中で彼を見ていると、唇を冷たい指先でなぞられる。
 もう、それだけでも頭がクラクラしそうになる。

 首筋に顔を埋められてその場所に唇が触れて、初めて彼から痕を付けられる。
 年上の男の余裕なのか弥生さんはまだ服を脱いでもいない。彼らしい黒のパジャマの上着のボタンは未だ留められたまま。

 私だけが、最後の一枚に手をかけられる……

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