Don't let me go, Prince!
私の問いに弥生さんは疑問で返してきた。私の前でいつも隙の無いように振る舞っているのは、私に幻滅されたくないから?
……まさか、そんなのは私の自惚れよね。
「見てもいない姿に幻滅するのかと聞かれても困るのだけれど。弥生さんは私がいない時はそんなにだらしない姿をしているのかしら?そう言われると逆に見てみたくなってしまうわよ?」
誰も居ない時の弥生さんの自然体ってどんなのかしら?
仕事終わりにこの部屋で、スーツの上着をベッドに投げ捨てネクタイを緩めてシャツのボタンをいくつか外して……
ソファーで寛ぐ弥生さんの姿を想像すると、だらしないどころか大人の男性としての色気で満ち溢れてる。
ついつい赤くなってしまう顔を隠そうとしたけれど、もう遅かったみたい。傍に寄って来た弥生さんに頬に手を添えられて上を向かされてしまう。
「またこんなに顔を赤くして……渚はどんな私を想像したのですか?」
「い、今は聞かないで。」
彼の触れる冷たい手に心臓のドキドキが止まらない。昨日はもっと深く触れ合ったけれど、私の中ではまだまだ恋心を育てている最中なのだから。
弥生さんが私を問い詰めようとすると、この雰囲気を壊すように「ぐうう……」と私のお腹が鳴った。
「……では渚が昨夜の様に、素直になってくれる時に聞く事にします。そろそろ朝食にしましょう。」
そう言うと弥生さんは軽いキスを私の額にして離れて行った。こんな時にお腹が鳴るなんて、私は彼と違って全然色気が無い妻だわ。
ちょっとだけ落ち込んで朝食を弥生さんと取ったのだけれど私は俯いてしまっていて、そんな私を彼が少し優しげな眼で見ていてくれている事には気が付いていなかった。