フォンダンショコラな恋人
「何で急に顔を隠す?」
「ちが……っあの、倉庫のこと思い出しちゃって……」

「倉庫? ああ、キスした時?」
こくこくっと翠咲は頷く。

「香りって五感の中でも記憶に訴えかける力が強いらしいからな。なるほど、この香りが翠咲の中の僕のイメージなんだな」

陽平はさらにボディソープを追加してわしゃわしゃとスポンジで泡立てた。
バスルームいっぱいに、香りが広がる。

「これはね、レモンバーベナっていうんだ。リラックス効果や疲労回復効果があるらしいよ。僕も好きな香りなんだ」

けど……と陽平はたっぷり立てたその泡を手の平にとる。

「今度からは、そのイメージに別のイメージがついてしまうかもね。なあ、この香りを嗅ぐたびに思い出せよ。気持ちよく、体に触れられている時のこと」

ふわりと泡で包み込むように、翠咲の身体を包んだ。

そうして泡に包まれた手が優しく翠咲の肌の上を滑っていく。
リラックスは本当かもしれない。
本当にいい香りで、抵抗なく身を委ねたくなってしまうから。
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