フォンダンショコラな恋人
「真面目に仕事して欲しいな」
「仕事は真面目にやったって。数少ないってか、今日みたいにほとんど誰もいない傍聴席に可愛い子がいて、倉橋を熱心に見ていたら、ああって思うだろう」

「熱心に見ていた?」
「ああ……」

倉橋も裁判に集中するようにはしていたけれど、裁判中も傍聴席を気にしていたから。裁判官はなんだ?と傍聴席を確認して分かったことだけれども。

「熱心……そうか」
いたく陽平が満足そうなのが、他の同期から見ても驚きだ。

陽平はその綺麗さから、かなりモテていたけれども、今までどんな美女にも靡かなかった。

いや、本人的には靡いていたこともあったのかもしれないが、あまりにも表情筋が死にすぎていて、理解を得ることができなかったのだろうと思われる。

その陽平の口元を引き上げるだけとはいえ、笑顔と満足げという無表情ではない表情の動きにみんな驚いてしまったのだ。

「そうかー、良かったなあ……」
まあ飲めよと言われて注がれたお酒を訳もわからず、陽平は飲む。

「で、どんな感じなんだ? 今?」
「一緒に暮らしてる。彼女のところも挨拶に行ったし」
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