主人と好きな人。

あたしって思っているより単純なんだな。
いつもより濃い口紅を塗っただけなのに、なんだかドキドキしている。
会社まで歩いているさなか、すれ違う人達の目線が気になった。
誰も見ている訳ないのに。


「ゆかせんぱーい!おはようございまぁす!」


みちかちゃんに声をかけられ振り返る。
手を振りながらあたしに近づいてくるみちかちゃん。


「あ!先輩今日ルージュの色違うじゃないですか!」

「そ、そうなんだよね。買ってはいたんだけど、付けるタイミングなくて。」


2人で肩を並べ会社までの道を歩く。
1つメイクを変えただけなのにこんなにすぐ気づいてもらえるんだ。


「いいと思いますー!ゆか先輩って元がすごい綺麗なのになんかいつも平凡って感じだったからー。」

「平凡・・・・・。」

「えぇ?!?!やだ(笑)言葉のあやですよお!」


みちかちゃんが慌てながら「「平凡」」と言った事について謝ってくる。
自分でもわかってたから別に謝らなくてもよかったのに。
さすがに大きく変わった訳じゃないから、会社中の人に気づかれた訳じゃないけど、
女性社員は目に入ったのか声をかけてくる人が多かった。


「今日も・・・疲れた・・・。」


いつも通り帰りの駅のホームにつきベンチに座り浮腫んだ脚をさすった。


「・・・・・・・・・・。」


いつもと違うメイクをしているからか、いつもはさすり続ける手を止めた。
背筋を伸ばし電車がホームに来るのをまった。
たった1ついつもと違う所があるだけで、気持ちはこんなに変わるのか。


「お姉さん」



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