(仮)愛人契約はじめました
 蓮太郎は、
「こんばんは。
 蓮形寺の友だちか?」
と彼女に訊いた。

 すると、そのエプロンの女は中に戻りながら唯由に向かって叫ぶ。

「お姉様っ、騙されませんわ、この人っ」

 おんなじ顔なのにっ、と言ったので、気がついた。

「おお、お前は邪悪な月子か。
 実物は、そんなに蓮形寺と似てないな」

「お姉様、この人、私のこと、邪悪って言いましたわっ。
 私とお姉様が似てないだなんて、目が節穴ですわっ。

 ついでにお姉様のこと、まだ蓮形寺なんて呼んでますわっ」

「お前ら、姉妹は言いたい放題の家系かっ」

 怒鳴りながら蓮太郎が月子について中に入ると、唯由がエプロンをつけてキッチンに立っていた。

 こちらを振り返り、
「すみません。
 お疲れなのに、余計、疲れる感じになっちゃって」
と苦笑いして言ってくる。

 そんな唯由のエプロン姿に、

 ……なんか今、一気に心洗われたな、と蓮太郎は、ぼんやり見惚れ、思っていた。

 蓮形寺。
 お前は俺に『お帰りなさい』って言ってくれないのか?

 そう思いながら、料理をつづける唯由の背を見つめていると、月子が先生に言いつけるように唯由の元に駆けていく。
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