(仮)愛人契約はじめました

 


 キッチンに立つ唯由の背中を見ながら、蓮太郎は、ドラマに出てくるお母さんみたいだな、と感心していた。

 自分の親がキッチンに立っているのを見たことがないので、そんな風に思うのかもしれない。

 うちの親がキッチンに立つのって、客が来たとき、パフォーマンス的に立つときだけだからな……。

 しかも、アイランドキッチンだから、バッチリこっちを向いているし。

 蓮太郎はキッチンに立つ母親の背など見たこともなかった。

 ちなみに、唯由の横には月子もいるのだが、蓮太郎の視界には入っていなかった。

 唯由は可愛らしく料理をしながら、相変わらず阿呆な話をしている。

「この間、スーパーにいったら、『とっておきゴミ袋』ってあって。
 どんなゴミ袋なんだろうな~と思って買ってみたんですけど。

 『とってつきゴミ袋』でした」

 まあ、それはいつも通りの光景なのだが……。

 蓮太郎は、チラと横に座る女性を見る。
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