(仮)愛人契約はじめました
「そうそう。
 その森村がさ」
とその誰だか知らない森村さんの愉快な話を男はしてくれた。

 場を盛り上げようと頑張ってくれているようだ。

 いい人だ、名前も知らない人だが……。

 私もぼんやりしてないで、話盛り上げなきゃ、と唯由が心を入れ替えようとしたとき、カウンターの方で、どっと笑い声が上がった。

「そうなんだよ。
 それで、森村がさーっ」

「ああ、あいつだろ。
 動物病院の息子の森村裕輝っ」

 全員がそちらを振り向いた。

 振り向かれたことに気づいたらしい、カウンターの一団が話しかけてくる。
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