辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「旦那様、どのお部屋をご案内すれば?」

 不機嫌な表情のセシリオに、ドリスがおずおずと小声で確認する。

「……二階の客間の奥の部屋を。彼女の部屋とは出来るだけ離してくれ」
「かしこまりました」

 セシリオは苦々しい気分で答えると、右手で額を押さえてハアッと深いため息をついた。

    ◇ ◇ ◇

 紅茶を片手にゆったりと本を読んでいたサリーシャは、ふと廊下から響く騒がしい物音に気付いた。
 この屋敷は廊下が石タイルなので、足音がよく響く。セシリオによると、要塞という特性上、敵が気付かないうちに侵入してきにくいよう、わざとそうなっているのだという。カツンカツンとなる女性用の靴のような足音に、何人かが通るようながやがやとした物音。姿は見えずとも、少なくない人数がサリーシャのいる部屋の前の廊下を通り過ぎて行ったことはわかった。
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