辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「何も聞いていないけど、今日はお客様でもいらっしゃるの?」
サリーシャは首をかしげて、部屋に飾られた花瓶の水を変えていたクラーラに尋ねた。今朝も朝食をセシリオと共にしたが、お客様の話は何も聞かなかった。
「どなたでしょう? 使用人の朝会でも聞いておりません」
クラーラも首をかしげる。朝会というのは、執事のドリスからその日の予定などを使用人全員に伝える会のことのようだ。使用人達は毎朝集まって、それを行っているという。
「では夕食の時間にでも、セシリオ様に聞いてみるわ」
サリーシャは壁の機械式時計を確認すると、夕食まではあと三時間ほどある。気を取り直して再び本を読み始めようと、窓際のテーブルに手を伸ばした。
と、その時、テーブル越しの窓から見える屋敷の馬車用の車寄せ付近に、深緑色の軍服を着た大きな男が二人立っているのが見えた。ここでは深緑色の軍服を着た大男は沢山いるが、今見える男性の肩に金色の肩章が付いているのが見えて、サリーシャは窓際に寄った。話し込んでいるもう一人の軍服にも肩章が付いているが、それは銀色だ。目を凝らして、そのうちの一人がセシリオであることを確認したサリーシャは目を輝かせた。