辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

 しばらくそれを眺めていたサリーシャは、満足気に口の端を上げた。

「早くお渡ししたいけど、どうしようかしら」

 サリーシャはハンカチを見つめてから時刻を確認した。既に夜の八時を過ぎている。
 忙しいセシリオは夕食の後も屋敷の反対側の仕事場に行ってしまうことが多い。部屋を訪ねても居ないかもしれないが、もし居れば、いつぞやのように優しく笑って歓迎してくれるに違いない。抱きしめてキスをしてくれるかもしれない。そう思ったら、自然と表情が緩む。少し迷ってから、サリーシャはハンカチを持って部屋を抜け出した。

 三階に上がると、やはりそこは静まり返っていた。サリーシャは照明が落とされた薄暗い廊下の奥を見た。暗がりにある一番奥の両開きのドアの下の隙間からは明りが漏れているのが見えた。明かりが漏れているということは部屋にセシリオがいるに違いない。
 サリーシャは目を輝かせると、悪戯心からびっくりさせてやろうと靴を脱いで忍び足で近づいた。しかし、いざドアをノックしようとして腕を上げたところでピタリと動きを止めた。中から小さな話声が聞こえたのだ。

「必要な弾薬はあと三日で指定の倉庫に到着する予定です」
「助かります。代金は後でまとめてでも?」
「構いません」
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