辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「サリーシャを知らないか?」
「サリーシャ様? お部屋にいらっしゃるはずですが?」
「……それが、いないんだ」

 呟くような小さな声に、クラーラとノーラの表情が怪訝なものへと変わる。セシリオはそんな二人の横をすり抜けると、そのまま図書室へと向かった。ドアを開くとそこは真っ暗で、人の気配一つしない。

「サリーシャ? どこだ?」

 セシリオの呼び掛けが、誰もいない部屋に虚しく響く。
 マリアンネの元にサリーシャが行くとは考えにくいし、ブラウナー侯爵は夕食後から今さっきまでセシリオの部屋にいたのだから、サリーシャの行方を知るよしがない。
 セシリオは踵を返すと廊下へ戻り、階段を駆け下りた。

 以前もサリーシャがいないと皆が探し回っていたことがあった。マリアンネと三人で外出した日だ。あの日、マリアンネとのことで拗ねたサリーシャは膝を抱えて中庭で小さくなっていた。

 勢いよくそのドアを開けると、中庭は何基かついた外灯にぼんやりと照らされていた。全て、サリーシャが中庭の改造をするにあたって新設したものだ。ガラスの中でチロチロと揺らめく炎に浮かび上がる小径を足早に駆け抜ける。殆ど完成した中庭の奥で、セシリオは呼び掛けた。
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