辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 本来、夜間の閉門時の通行には許可証が必要で、それがなければ門が開くことはない。しかし、サリーシャはセシリオの婚約者の立場であるので、門番からすれば強く言われれば足止め出来る相手ではないのだ。足止めなどすれば、逆に門番が不敬に問われる可能性があると思っても仕方がなかった。

「外門は? 外門の門番はどうした?」
「直ぐにサリーシャ様が来ても門を開けるなと伝令を出しました。間に合ったかどうかは分かりませんが……」
  
 モーリスの部下が答える。

「くそっ!」

 それを聞いた途端、セシリオは屋敷の外の厩舎へと走り出した。馬車とはいえ、こんな夜更けに身なりのよい若い女が一人で外に出るなど、いくら治安のよいアハマスでも何があってもおかしくはない。強盗、人拐い、野犬……最悪の事態が脳裏によぎり、セシリオはぐっと拳を握り締めた。


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