政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「当日はふたりで会いたいと言うから私は同席できないが、会場までの送り迎えはするし、なにかあったらすぐに駆け付けられるよう、近くで待機している」

「ありがとうございます」

 伯父が近くにいてくれるなら心強い。

「いや、当然のことだ。……いつも言っていることだが、どんなに些細なことでもいい、なにか困ったことがあったらいつでも連絡をしなさい。話は以上だ」

 先に立ち上がった伯父に続いて私も立ち上がり、玄関まで見送った。

「夜分遅くにすまなかった」

「いいえ。着物、ありがとうございました」

 思いがけないかたちで母の形見を手にすることができたのだから。

「いや、礼には及ばん。戸締りを忘れないように」

 最後にそう言って伯父は帰っていった。

 最初来た時は緊張でいっぱいだったけれど、途中から緊張は解けていた。それは思いがけずに伯父の本音を聞いたからかもしれない。

 言いつけ通りにしっかりと戸締りを確認して、入浴を済ませた。

 そして寝る前にもう一度母の着物を眺める。
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