政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「航! 結婚は絶対に認めませんからね」

 私たちが部屋を出る前にお義母さんに言われた一言に、一瞬航君の足が止まる。だけど彼は振り返ることなくすぐにまた足を進めた。

 廊下を突き進み、玄関を出て車に乗り込むまで航君は一言も話さなかった。もちろん私から声をかけることもできず、沈黙の時間が流れる。

「今日は嫌な思いをさせてしまい、すまなかった」

「いいえ、そんな。……私のほうこそ航君のように立ち回ることができず、すみませんでした」

「そんなことはない。もとはと言えば千波をひとりにさせた俺の責任だ。……わかったと思うが両親は俺たちの結婚に反対している」

「……はい」

 今さっき、身をもって知った。だからこそ今一度航君の気持ちを聞かせてほしい。

「あの、もう一度聞かせてください。……本当に航君は私と結婚してもいいんですか? 後悔しませんか?」

 ご両親があんなに私との結婚に反対するのは、彼の幸せを心から願っているからこそだと思う。

 それに庵野グループの地位は揺るぎないものだ。うちの旅館のように倒産することなどあり得ないはず。私と結婚しなくたって今後もずっと大きく成長することだって可能じゃないだろうか。

 現にお義母さんも言っていたじゃない、航君に庵野グループを背負って立つ器も実力もつけさせてきたって。だったら迷信かもしれない言い伝えに忠実に従うことはないのに。
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