政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 その思いで言ったものの、航君はますます悲しげに表情を歪めた。

「前にも言ったけど、俺は千波以外と結婚するつもりはないよ。……それに嫌いな相手と結婚するわけじゃないから後悔もしない」

「えっ……」

 嫌いな相手と結婚するわけじゃないって……いや、私のことは好きでもないし、嫌いでもないってことだよね?

 航君が意味深なことを言うものだから、少しだけ焦ってしまった。

 勘違いしちゃだめと自分に言い聞かせていると、急に手をギュッと握られた。びっくりして彼を見れば、真剣な瞳を向けられていて一瞬息が止まる。

「ちゃんと伝わったよな? 俺は千波だから結婚したいんだ」

「私だから、ですか?」

「あぁ」

 オウム返しした私に力強く答え、航君は話を続けた。

「だから千波の言う後悔は絶対しないし、どんなに周りが反対したって千波と結婚する。……だからそんな俺との結婚を考え直すなど、悲しいことを言わないでほしい」

 目を離すことなく言われた言葉が胸の奥深くに刺さり、苦しくなる。

 こんなことを言われたら、航君は私を好いているから結婚したいと思っていると勘違いしてしまいそう。

 でもそんなことあり得ない。だって私たちはまだ出会って一ヵ月も経っていないのだから。
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