政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 航君は悪い人ではないと思うし、彼との間には結婚後に愛が生まれるかもしれないと期待をしていた。だけど自分の気持ちは不確かなもので、はっきりと恋心と認められるものではない。

 それはきっと航君も同じだと思う。だから決して彼は、私を好きだから結婚したいのではなく、嫌いじゃないし、それに言い伝えがあるから私に好意的なだけ。

 そう自分に何度も言い聞かせても、握られた手から彼の熱が伝わり、それは私の身体中を巡っていく。

 次第に頬が熱くなってしまい、恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。すると航君は「フッ」と少しだけ笑い、私の手を離した。

「その様子だと、俺の気持ちはちゃんと千波に届いたようだな」

「えっと……」

 気持ちってなに? せっかく自分に勘違いしちゃだめって言い聞かせていたのに、そういうこと言われたらわからなくなる。

「帰ろうか」

 そう言って航君は再び車を発進させた。

 アパートに着くまで航君は表情には出ていなかったけれど、でもどこか機嫌が良さそうだった。そんな彼をチラチラと横目に見ながら、私はますます航君の気持ちがわからなくなってしまう。

 私を好きじゃないですよね? 好きだとしても出会ってすぐで、どこを好きになってくれたんですか?

 聞きたいことはたくさんあるのに聞けるはずもなく、アパートに到着した。そして帰りがけに「千波と一緒に暮らせるのを楽しみにしている」と言われ、私はますます混乱してしまった。
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